高校の時、ブラック部活に所属していました。今でも夢に見るくらいトラウマなので、自分の中で消化するために実情をまとめます。入学の時期でもあるので、新入生の中学生、高校生の誰かにも届けばいいなと思います。
- 1.基本的な情報
- 2.活動内容
- 3.人間関係と洗脳
- 番外編「甲子園応援」
- 5.ブラック部活の部長
- 4.在学時に考えていたこと
- 5.ブラック部活に入ると人はどうなるのか?
- 6.私はどう考えているのか?
- 7.ブラック部活に入っている人へ
1.基本的な情報
・公立高校の吹奏楽部
・時期は約10年前
・レベルはたまに全国大会に行く程度、地方大会では毎年ダメ金を受賞。
・私…中学からの経験者。吹奏楽のためにこの高校を選びました。
(役職:1年次学年リーダー、2年次学年リーダー、副部長、部長、パートリーダー、演奏時の演出を考える係、ダンスをする人、など)
2.活動内容
年間稼働日数358日(休みは盆と正月のみ、年に7日)
平日:放課後~19時まで練習
休日:8時半~17時まで練習
(平日・休日ともに1時間程度の朝練あり)
休むことは原則認められていません。休みが認められるのは「インフルエンザ、忌引き、自然災害等で交通機関が止まり、かつ身体に物理的な危険が差し迫っているとき」のみです。
<年間スケジュール>
春:春のコンサート、合宿、定期演奏会(センバツがあれば野球応援)
夏:全日本吹奏楽コンクール、野球応援(平均4回くらい駆り出される、甲子園まで行けば甲子園まで行く)
秋:秋のコンサート、全国大会(行ければ)、世代交代による組織改編
冬:冬のコンサート、アンサンブルコンテストと吹奏楽の選抜コンクール全国大会(あれば春高バレー応援)
(大会、客演演奏会のため毎月どこかしらに遠征に行く)
3.人間関係と洗脳
◆顧問=絶対神。公立校にも関わらず20年近く在籍し続ける顧問。一代で地方弱小高を全国ニアミスレベルまで押し上げた立役者。プロオケ出身のためか、自分がかつてやっていた楽器のセクションに特にうるさい。
吹奏楽部はよく「宗教」と言われますが、本当にその通りだと思います。
ズブの素人をまともな演奏家にするには「洗脳」という手法を用いてひたすら練習させるしかないからです。裏を返すと、楽器演奏の技能は練習の質×量で決まるということです。
①全国常連校に比べ、うちはまだ優しい方という刷り込み
「○○高校や△△高校(全国常連校)は毎日夜9、10時まで練習してるんだぞ! それに比べたらまだやさしいものだ(だからつべこべ言わずにやりなさい)!」と、何度も何度も繰り返し言われました。そのたびに私は(そうかぁ…)と思っていました。ただ電車の本数が少なく、通学にただでさえ時間がかかっていたので普通にしんどかったです。
②異常な連帯責任論
以下のことをすると連帯責任として学年、パートごとに早朝清掃などをさせられます。
・定期考査による居残り
・特定の期間(大会前など)朝練に来ない
・部員間のトラブル
1日休むと取り戻すのに3日かかる神話を口を酸っぱくして言われました。とにかく一事が万事で、一日足りとも練習をさぼることは許されません。生徒同士の相互監視も行き届いています。極めつけは、顧問が「親族の葬式を休んでまで部活に来た生徒のエピソード」を美談として扱うことです。その生徒が休むはずだった日は大事な大会などではなく、通常の部活の日でした。冠婚葬祭を蹴ることが美談にされていると思うと、かなりゾッとします。
ただ、強い言葉は使っても人格否定系のことを言わないだけましだったなと思います。
◆先輩
相互監視の目付け役。9割の先輩が優しかったが、1割は意地悪してくるひとがいた(挨拶を無視する、面と向かって嫌味を言ってくる、)
公式ルール
・校則の順守(化粧・巻き髪禁止)
・スカートはひざ下(服装の順守)
・遠征時の荷物の大きさを指定(1週間の滞在でも最大スポーツバッグ1個まで、キャリーケース禁止)
・演奏服のズボンは支給されないが、細かい規定がたくさんあり、買うのが困難
非公式(部の伝統)の部員ルール
・部内恋愛禁止
・先輩への挨拶はその日に2回、3回会ったとしてもかならず行う
・文化祭や体育祭のときの化粧、ヘアアイロン禁止(ほかの部活は黙認されている)
番外編「甲子園応援」
吹奏楽部は野球部の奴隷です。炎天下の中、したくもない応援に行かされます。もちろんバイト代など出ず、手弁当で行きます。ボランティアです。
ハッキリ言おう。野球部が大嫌いだと。吹奏楽部がいくら野球部に尽くしたところで、感謝されることはありません。ただただ搾取されるだけです。吹奏楽応援を美談のようにもてはやす外野も大っ嫌いです。本当に野球は嫌い。
5.ブラック部活の部長
仕事内容…点呼、号令、先生への報告、OBへの対応、コンサートなどでの挨拶etc
自分はしたくなかったので一度は断りました。ことあるごとに皆の前にただ、部長は
4.在学時に考えていたこと
早く辞めたい。
これに限ります。自分は学年リーダーということもあり(今となってはどうでもいいこととわかりますが)現役の時に退部する=死、くらいのことを考えていました。早く三年の秋になって早く辞めたい。こればかり考えていました。
全国大会決まった時も、喜びよりも(あと2か月も練習するの…?)という気持ちが先に来たくらいでした。それでも演奏することは楽しかったし、楽器のことは好きでした。ただ本当に「強制されてやる練習」が苦痛だったし、人間関係も最悪だったので、とにかく「吹奏楽」という概念から逃れたかったです。
三年の冬、受験勉強をしていると、「ヤバさ」がだんだんわかりはじめ、
5.ブラック部活に入ると人はどうなるのか?
①自分がなくなる
自主性がなくなくなり、自信がなくなり、自分が無くなります。教師にの定めた指針から一歩でも外れると𠮟責の対象となるため、自分。
学校が遠かったため通学に時間がかかり常に寝不足でしたし、常に余裕がありませんでした。
そして高校を卒業し、ようやく「信仰≒よすが」として生きてきた吹奏楽から離れると、体から芯が抜けるように軸がブレブレになります。卒業後、在学時からは想像できないほど荒廃した生活を送る人もいました。
②青春がなくなる
一切遊んだ記憶がありません。友達と遊ぶことはおろか、漫画を読む、ゲームをするなどの余暇も本当にする時間がありませんでした。なぜならずっと練習をしていたからです。部活以外の時間は授業の宿題をこなすか、食事や風呂などの生活に最低限必要な時間で終わりました。多感な時期に、もっと本や漫画や映画に触れたり、色んなところで遊んだりしたかったな…(そもそもバイトは禁止でした)。
③進学先が限定される
これが一番つらかったです。
忙しい中でも勉強している人は勉強していましたが、していない人はとことんしていませんでした。それはどの部活も同じです。問題なのは、部活のせいで「将来を考える時間が取れない」ということです。部活をやっている時期は「吹奏楽」のことだけ考えるように顧問に仕向けられるので、高校卒業後のことを本当に考えられなくなります。私自身時間や余力が無さ過ぎて、大学を調べる、オープンキャンパスに行くなどの行動ができませんでした。もっと余暇の時間があれば、今後のキャリアにつながるような体験ができたかもしれない、と何度も思います。
忙しくても進路のことを考えてる人はいるかもしれません。でも9割の生徒は本当に部活(≠音楽)のことしか考えられなくなるんです。それは幸せなことかもしれないけど、その後の人生を棒に振るほど素晴らしい体験ではありません。
もちろん音大や自衛隊(音楽隊志望)に行く人もいました。そういう人にはいいでしょうが、一般の進学先を選ぶ人にはそうでもないです(そもそも音大に行く人は、個人的に楽器の先生のレッスンを受け、演奏技術、楽理やソルフェージュ、和声などののスキルを磨くわけなので、部活としての演奏はあくまでとっかかりに過ぎない)。
④「団体行動」に対する強い忌避感が生まれる
団体に対して「組織ぐるみであんなに恐ろしいことをしていたのか…」→「組織って悪が作られる装置なのでは?」→「なるべく組織に所属したくない!」という考えが浮かび、大学のサークルや団体での生活がしばらくの間ぎこちなかったことを思い出します。
6.私はどう考えているのか?
部活はあくまで教育です。その枠組みを越えた過度な指導は不適切だと考えます。子供の持つ選択肢と可能性を狭めることだけは本当にやめていただきたい。
鍛冶舎巧さんが「引き出しの少ない指導者は生徒を型にはめたがる。個性を尊重し奔放にやらせると自分が対応できなくなるから」と言っていましたが、まさにその通りだと思います。
https://www.sakaiku.jp/series/growth/2018/013792_2.html
これは運動部の事例ですが、吹奏楽をはじめ文化系の部活にも通ずる考え方です。部活はあくまで遊びです。ブラック部活にいると部活=人生をかけてやるもの、という錯覚を起こしますが、人生におけるごく一部です。プロを目指してその道に進む人もいますが、それもごく一部です。何がなんでもその道に進みたい!と思えるものでなかったら、本当に、ほどほどでいいと思うのです。
でもそれを許さないのが「団体競技」という枠組みなのでしょう。中高の部活ではソロの演奏技術ではなく、吹奏楽の楽曲としての演奏技術を高めることを要求されます。逃げ場はありません。
7.ブラック部活に入っている人へ
今すぐ辞めても正直なんの問題ありません。辞めたかったら今すぐ辞めましょう。内申に響くこともほぼありません。先生はわざわざ悪いことは書かないからです。あなたの本当にやりたいこと、学びたいことは何ですか?それをじっくり考えてみましょう。