狂気の沙汰も萌え次第

雑記ブログのはずが同人女の日記になりました。

同人しくじり先生~俺みたいになるな~ 合同誌編

 以前、仲の良かった友人と合同誌を作りました。お互いはじめての合同誌制作でしたが、紆余曲折ありながらも発行までこぎつけ、頒布することができました。しかしその代償は私にとって、とても大きいものでした。


Q.合同誌を作った結果どうなってしまったのか?

A.合同誌を作った相手と絶縁した。


 なぜ絶縁に至ったのか? 絶縁に至ったのにも関わらず無事頒布できたのはどうしてなのか? 合同誌制作の経緯とトラブル、そこから得た学びを書いていこうと思います。


~ここからフェイクが含まれます。多少つじつまが合わなくてもご了承ください~


<登場人物>
・私(字書き)
・元友人(絵描き)
ジャンルを通して知りあった仲。合同誌を作ったのは知り合って2年くらい経過してから。

1.合同誌制作の経緯

 合同誌制作に至るまで意外と長いバックグラウンドがあります。元友人(以下、Aとする)交流が始まるとトントン拍子に仲良くなり、そのうち私が絵を描いてもらったり、私が小説を書いて贈ったりするようになりました。すると自然に合作の話が出て、漫画と小説のリレー形式の短編作品の制作に取り掛かりました。ここで私は誰かと作品を作る喜びを知ります。
合同制作には一人で制作するのとはまた違った充実感や達成感がありました。2作、3作と回数を重ねるうちに、これまで作ったものと新作を合わせて同人誌にしないか、という提案を私から持ち掛けました。費用はすべて折半、半年後のイベントで頒布する旨で話がまとまり、細かい部分は適宜話し合いで決めることになりました。
 この時点で、私はすっかり安心していました。これまでの合作で締め切り遅れなどのトラブルは一度も発生せず、友人関係も良好だったからです


※しくじりポイント①仕様書を書面に残していない
通話とメッセージのみのやりとりで、具体的な使用をまとめたものを書面に残していませんでした。一応、参考までに入稿までのスケジュールをガンチャートで引き、合意が取れた仕様をメモ書き程度でまとめて共有は行っていました。が、相手が確認していたのかは正直わかりません。この時にギチギチの仕様書を作っておくべきでした。


※ちなみに役割分担は以下の通りです。
私:責任者、進行管理、小説執筆、デザイン、宣伝
A:漫画執筆、デザイン、入稿


2.たのしい合同誌制作、あやしくなる雲行き

①無断で改変
はじめにテーマや内容についての打ち合わせを行いました。話はサクサク進み、内容がいい感じに煮詰まりました。
 いよいよ合同誌の制作に入ります。リレー形式といっても作品の性質上、相手の原稿完成を待たずしても、ある程度は自分の担当分の原稿を進めることが出来ました。
進捗管理表を作成し、私が適宜記入していました。が、途中からAの作業の遅れが目立ち始めます。締め切りまで2ヶ月となり、このままのペースだと発行が危うい旨を相手に伝えました。すると出来れば作業ペースを落としたいとの連絡がありました。出来ればじっくり作りたいと思ったし、作業量が多い漫画のスケジュールに合わせたいと思いその時点で発行を3か月伸ばし、ガンチャートを引き直しました。
 この締め切り変更について、私は全く異論はありませんでしたが、このあたりから雲行きが段々怪しくなっていきます。



①無断で改変

 原稿はClip Studio(以下、クリスタ)の共同編集モードを利用して編集していました。それぞれの担当分が出来上がるたびにクリスタにアップロードしていました。私もテキストをクリスタ用に変換し、アップロードしていました。
 ある日、クリスタ上で自分のデータを修正しようとすると、あることに気づきます。原稿が改変されていました。改行が増えたり、謎の空白ができたりするようなイメージです。はじめはAが誤ってキーボード操作したのだろうと思い、特に触れることなく自分で修正しました。
 しかし、後日改めて見るとまた改変されています。たかが改行、されど改行。自分なりに考え、こだわったものなので勝手に変えられると困ります。絵で言えば勝手に描き足されたり一部を消されたりするのと同じです。定例の打ち合わせの時に「勝手に直されると困るのでやめてほしい、変えた方がいい点があればこちらで検討するので言ってね」とやんわり伝えました。

※しくじりポイント②意見をはっきり伝えなかった
 ここで勝手な改変をやめてほしいと「強く」言うべきだった。同時に議事録としても残すべき。言った言わないの話になるので議事録は毎回作ろう。


②強すぎるオリジナル要素、却下される私の案

 さて合同誌制作も中盤です。抜け、漏れ、明らかなミスをみつけるため、原稿の確認作業を行います。はじめは(形になってきた〜いいぞ!)という気持ちでチェックを進めると、様子がおかしいページが出てきます。以前決めた話内容と若干違うのです。前後の流れ的にはおかしくはないけど、けどまぁ違うよな……という感じで、確認を取ると、「ああしか描けなかったのでああしました」と言われました。こちらもこれ以上は口出し出来ないので「そうですか、わかりました」と返信します。



③伸びる締め切り

 さらに発行が3ヶ月伸びました。当初より半年遅れる計算です。一度伸ばした締め切り近くになっても原稿が上がってこず、もうどう考えても間に合わなさそうなので「私の分は出来ていますが、締切を伸ばしますか?」と打診し、相手が了承しました。
出来ないところを補い合うのは当たり前です。でも締切直前になって「やっぱり無理」と丸投げしてくるのは流石にないっすよ~(笑)。結局私が大急ぎで代替の素材を用意し、ページを埋めることになりました。


※しくじりポイント③無闇矢鱈に締切を伸ばしてはいけない
無闇矢鱈に締切を伸ばしてはいけない
 相手を立てようとか思わない。合同誌なので責任は半々。締め切りを伸ばすことで、原稿の雰囲気がよくなることはない。むしろダレるしトラブルの元。必ず守れる締切を設定しよう。




④金銭問題
さてそろそろ作業も大詰め…というところで、相手が相談無しで表紙のデザインを変えてきました。以前、「どんな感じの表紙がいいですか?」と聞かれたので案を渡し、「これで作ってみます」と言っていたのに、です。私の考えた案を100%採用しろと言っているのではありません。ただ聞いてきた割に意見のすり合わせもなしに全然違うものを提出されると、徒労感がものすごい。
 そして相手が(無駄に)装丁に凝りまくったおかげで、見積もりの金額も部数に対してべらぼうに高く(ページ数がそんなにないのに1冊あたりの値段が見たことない金額になっていた)、正直この金額を折半するの? マジで? と思いました。自分自身、同人は赤字上等でやっていますが、ここまでの持ち出しは想定していませんでした。事前に装丁にこだわりたいと聞いていましたが、ここまで⁉ という感じでしたが、前もって決めていない私が悪いし、表紙も装丁込のデザインなので、もうええか……と了承しました。

しくじりポイント④具体的な予算感を事前に決めよう!
 当たり前すぎますが、こうなる前に決めよう。


⑤とにかく私の話を聞いていない、言ったことを覚えていない
 ここからは普通に愚痴です。素材の話になった時私は「有料だけど○○という素材がいいですよ。今回の本にも合うと思います」とあるテスクチャをおすすめしました。Aも「良さそう!」と言っていました。後日、小説の背景に〇〇を使用したところ、「私の紹介した素材使ってくれたんだね」と言われた時は真面目に宇宙猫になりました。ゑ?? 聞いた言葉を自分の言葉にしちゃう系の人だったのか~…。
 そして自分の言ったことも覚えていない(例:土曜日までに共有します→共有しない。声掛けすると「え?」みたいな反応)。自分の言ったことは覚えていてくれ



③とにかく私の話を聞いていない、言ったことを覚えていない

 ここからは普通に愚痴です。
 素材の話になった時私は「有料だけどXという素材がいいですよ。今回の本にも合うと思います」とあるテスクチャをおすすめしました。Aも「良さそうですね〜」と言っていました。後日、小説の背景にテスクチャXを使ったところ、「私の紹介した素材使ってくれたんだね」と言われた時は真面目に宇宙猫になりました。ゑ???もしかして他人から聞いた言葉自分の言葉にしちゃう系の人だった?
 そして自分の言ったことも覚えていない(例:◯日までに共有します→共有しない。声掛けすると「え?」みたいな反応)。自分の言ったことは覚えててくれ。大人として。


3.決裂

表紙のイラストが固まった時点で、私がロゴの案をいくつか作って提出しました。全部却下されました。理由を聞くと「私の絵に雰囲気が合わないから」だそうです。「前の××みたいな雰囲気がいい」と後から言われて「それはさすがに前もって言ってもらわないと分かりません」と若干怒り気味で伝えてしまいました。そしたらロゴ制作は一旦止めてくれと言われました。さすがにハァ? となり、××案でロゴを作り直し早急に提出しました。
すると「私が足を引っ張ってる」「スランプで描けない」「私生活がしんどい」「私が全部悪い」という旨の謎の謝罪風メールが来ました。何故謝罪に無意味な自虐を混ぜる? 私は今起こっていることの解決をしたいだけなのに? と困ると同時に、スゥーっと自分の中で熱が冷めました。
 ロゴは自分の中でこだわっていた部分だったし、「私の絵には合わないと思う」という理由で断られたのも結構ショックでした。でもそんなのは些細なことでした。私の中では、却下され続け、否定され続けて最後の堪忍袋の緒が切れたような感じでした(これはロゴで癇癪起こしたと思われないよう相手にも伝えた)。
もうこれは合同誌ではなく、あなたの個人誌ではないですか?  私の分の原稿は入稿出来る形になっているのでもうご自由にどうぞ、みたいな気持ちになっていました。とはいえ、お願いだから最後のダブルチェックだけさせてくれ、という感じでしたが、知らぬ間に入稿されていましたとさ。
第三部完!


4.さらなる災難

 期日通り本が到着。しかしあることに気づきます。


肝心の表紙の文字部分、印刷されてねぇーーー…


明らかな入稿ミスです。こちらから入稿前のダブルチェックを打診していましたがスルーされた結果こうなりました。もうここまで来ると嫌がらせなのか? と思わなくもないですが、その考えはスルーして「これってどういうことですか?」とヒアリング。やはり入稿ミスとのこと。解決案を一緒に考えようと言っても「私の手を煩わせたくない」と話し合いを拒否されました。私は今起こっていることの解決をしたいだけなのに? そして相手は泣きました。いい大人がこんなことで泣く⁉ 誓って私は怒鳴ったりキツい言葉を使ったりしていません。冷静に話すように努めていました。
 対話を放棄した姿勢に心底ウンザリしていました。一緒に解決策を探そうと提案しているのに、「私が悪い」と無意味な自虐を混ぜて、所謂「泣き落とし」で言うことを聞かせようとするのでかなりタチが悪い。さらには「私としてもはやくこの原稿を手放したいんです」と言われる。いや、発行伸ばすことになったのはあなたが当初の締切を守らなかったからです。
 結局、次の日までこちらで応急案の入稿データを作ると連絡し、向こうから了承を得ました。しかし翌日、またしても私の案は却下されました。なんでそうなるんですか? と連絡すると「私のミスだから私がカタをつける」と言い出したので、「そんなことどうでもいいから独断で動くのはやめてくれ」と言いました。するとAは「私が何を言っても川崎さんの気を損ねると思うので何も言えません」と泣きました。えぇ……泣きたいのはこっちだよ。不機嫌で相手をコントロールするタイプだとは思っていなかったので余計にしんどい。


5.頒布当日

こんなに重い足取りで会場に行くのは初めてです。全然関係ないけどスペースに着くとなぜか私の個人誌のダンボールが開けられていました。ミスだと主張されようが、「全然いいですよ」なんて言えるテンションじゃないので「勝手に開けられると困ります」と苦情を言いました。
 話すのは挨拶と必要事項のみで、黙々と頒布。きっとこれが現ジャンル最後のイベントになるなと感じながら、ひたすら頒布。とにかくいままでのことを無駄にしたくない、ここまできたらやりとげたい、買いに来てくれた人に誠実でありたい、という思いだけで動いていました。
 私が発起人のため、在庫は全て私が買取り、通販に回しました。通販に関しても、またしてもAは「自分で言ったことを忘れている」状態で、ここには書きませんが、クソみたいな腹立つ一言を言われ、Aのような約束を守らない人間になりたくなかったので、大人の対応でやり遂げました。
 そして、完売。
 私は誓いました。もう合同誌はやるまい――と。お金に関しても揉めましたが、双方が納得する形で終結しました。そして私は全てのアカウントでAをブロックしました。大人げないと分かっていても、もう無理でした。


6.しくじりから学んだこと

①「合同誌を作りたい」という憧れで行動すると痛い目を見る
 合同誌は自分の中で割と憧れであり、いつか作りたい! の代表格でした。かつて、井上陽水奥田民生が『アジアの純真』を作り上げるように、私もそういうコラボレーションでしか作り得ない作品(もの)を作りたいと思っていました。しかし、自我や、作品の方向性が定まり切っていないアマチュア同士が行うと、互いを傷つけあうことになり、結果事故ります。そしてあもちろんくまで趣味のため、仕事ほどの強制力はありません。性善説ベースで物事が進行し、かつアンソロのように仲介してくれる人もいません。
 じゃあ、合同誌を作るならば相手は誰でもよかったのか? と言われると、違います。私はAの作品が好きだったし、Aも私の作品を好きでいてくれました。そのベースがあって実現した企画です。だからこそ、その関係に留まっておくべきでした。

②自分が優しい人であろうとすると痛い目を見る
 私は今回、「絵の方が作業量が多くて大変だから」という理由で、とにかく相手の都合を優先してしまいました。そのように変に気を使った結果、自分の中で鬱憤が溜まり、最終的に爆発しました。
自分から声を掛けたとしても、相手が話を請けた時点で向こうにも責任があります。相手だけじゃなく、自分も大切にしましょう。

③作品自体は黒歴史にはならない
 いろいろありましたが、成果物は結構いい出来になったのではないでしょうか。中盤まではいい感じに作業が進んでいたのだし。
 もちろん私にとっては意図してない改変があるため、細部までみると(うーん)と納得しきれない部分もありますが、全体の枠組みを見ると、結構いいものができたんじゃないかと思います。純粋に作品のパワーがあります。なお読むと芋づる式に嫌な記憶が蘇るので読み返せません。いつか読める日が来るのかな。



7.合同誌をしくじらないために

①そもそも合同誌を作らない
身も蓋もないですが、これが最適解だと思います。それでも作りたくなるときはあるでしょう。じゃあその時はどうすればいいのでしょうか?


②「何が作りたいのか」より「この人と本当にやりたいのか」をよく考える
合同誌、ないしアンソロで友情を失ったという話はよく聞きます。今回の顛末も同じです。だからこそ「友情を失うかもしれない」覚悟をもって、かつベタベタの友人っぽいやり取りは抜きで、ビジネスライクなやりとりが出来るかが鍵であると思います。


③事前の取り決めをがっちり固めておく
 決めごとに関して、事前に仕様書を作りましょう。内容、締切、お金の管理(あらかじめ、個人として持ち出しできる上限を明示)、原稿の管理方法、在庫、イベント当日の仕切り、守られなかった時の対処方法等、とにかく事前に決めておく。署名の上クラウドに残しておいた方がいいと思います。また、取り決めが守られなかったときの対応方法を明確にしておくのも重要です。「双方の話し合いによって決める」はほぼギャンブルです。
事前に具体的に決められないこともあるでしょう。それでも暫定的に「こんなかんじで」と決めておくべきだと思います。役割分担を明示するはたらきもあります。


8.最後に

 それでも同人は楽しいです。かつ、他人と協力して何かを創り上げることは、一人では体験し得ない充実感と達成感をもたらします。私が言えたことではないですが、リスクに納得できる人だけ合同誌を作りましょう。得られるものは多いです。
n=1の少ないサンプル数での、主観でしかないルポでしたが、表に出てこないだけで、今回のような例や、計画段階や製作途中で頓挫した企画は山ほどあることでしょう。その視点から見ると、発行できた(=苦労が水の泡にならなかった)だけまだマシかなと思います。

 Aさん。色々ありながらも最後まで投げ出さずに取り組んでくれてありがとう。
ちゃんと発行させてくれて、ありがとう。
私は、合同誌を二度と作りません。